電気主任技術者とは
電気主任技術者は電気事業法に基づく国家資格
電気主任技術者は電気事業法に基づく国家資格で、取り扱いできる事業用電気工作物の電圧によって、第一種・第二種・第三種に分類されます。電気主任技術者が担う役割は、ビルや工場、発電所、変電所などの電気設備の保安監督業務です。これらの業務は、電気主任技術者の資格がなければ行えません。
試験は略称で呼ばれることも多く、第三種電気主任技術者試験の場合、「電験三種」と呼ばれています。
電気主任技術者と電気工事士の違い
電気主任技術者が事業用電気工作物の工事や、維持・運用の保安監督者であるのに対し、最大電力500キロワット未満の需要設備や一般用電気工作物の電気工事を行うのが電気工事士です。
つまり、電気主任技術者は電気工事士を監督する立場にあり、電気工事士は電気主任技術者の指示に従って作業を行う必要があります。
電気主任技術者は電気工事士よりも高い収入が期待できる
厚生労働省が2019年に公表した「賃金構造基本統計調査」によると、電気工事士の平均年収は賞与込みで472.5万円でした。電気工事士を監督する立場にある電気主任技術者であれば、電気工事士の平均年収よりも上を目指すことも可能です。
電気主任技術者は、現場の状況を的確に見極める判断力や、高い専門知識を必要とします。重責を担う資格だからこそ、電気工事士よりも高い収入が期待できるのです。
参考:賃金構造基本統計調査|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html)
電気主任技術者の具体的な仕事内容
電気主任技術者の具体的な仕事内容について詳しく説明します。
電気設備の点検作業をする
電気主任技術者のメインの仕事は、電気設備の点検作業です。些細な不具合でも、見逃せば重大な事故を招きかねません。このように、事故防止において重要な役割を担っています。
具体的な作業内容は、電圧や電流の計測・記録、漏電防止に欠かせない絶縁体の抵抗の測定、配線のネジの確認、非常用発電機の点検などです。
電気設備周辺の清掃作業をする
電気設備の点検の際、周辺の清掃作業も欠かせない重要な作業です。電気回路のそばにほこりなどがあると電気配線がショートを起こし、電気設備が故障する可能性があります。わずかなほこりにも気が抜けません。
電気設備の故障対応をする
電気主任技術者は電気設備の故障対応も行います。電気設備に不具合や故障が見つかった場合、原因を突き止めてどのような工事が必要なのかの判断をします。修理工事が必要だと判断した際に、電気工事士に修理の依頼をするのも重要な役割の一つです。
修理工事の当日は、監督者として電気主任技術者も工事に立ち会う必要があります。
電気主任技術者の資格を取得するメリット
電気主任技術者の資格を取得することで、年収アップ以外にどのようなメリットがあるのでしょうか。
さまざまな業界で活躍できる
電気設備の点検や管理はどの業界でも必要なため、仕事内容は同じでもさまざまな業界で活躍できます。たとえば、工場を持つメーカーや通信会社、ホテル、商業施設、病院、大学などが挙げられます。
電気や電気設備は幅広く使用されているため、働く場所は多岐にわたります。
就職や転職に有利
電気主任技術者は、将来的に人材不足になると危惧されています。2019年に経済産業省が作成した「電気保安体制を巡る現状と課題」によると、有資格者の約6割が50歳以上、そのうち約4割が60歳以上であることが明らかになりました。
また、有資格者の高齢化だけでなく、オフィスビルや再生可能エネルギー設備などの増加も人材不足の要因の一つと考えられています。このように、電気主任技術者の需要が高まることが予想されることから、就職や転職に有利な資格といえるのです。
参考:電気保安体制を巡る現状と課題|経済産業省(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/hoan_jinzai/001.html)
電気主任技術者の資格の種類
第三種から第一種までの3つの資格について紹介します。
第三種電気主任技術者(電験三種)
電験三種を取得すれば、出力5000キロワット以上の発電所を除いた、電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物の工事で、点検や保安監督業務が行えます。電気工作物とは、施設などに電気を供給するのに必要な受電設備や電気使用設備、屋内配線などの総称です。
電験三種が保安管理を行えるのは、工場やビル、小規模な再生可能エネルギーによる発電設備などです。
第二種電気主任技術者(電験二種)
電験二種は、第三種よりも扱う電圧が高くなり、電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物の工事や、維持・運用に必要な保安管理が行えます。取り扱える電圧が高くなることから、第三種以上に専門的な知識や経験が必要になるでしょう。
対象となる施設は、中規模の再生可能エネルギーによる発電設備や大規模な工場などです。
第一種電気主任技術者(電験一種)
電験一種の資格を取得した場合、第三種や第二種と異なり扱える電圧に上限はありません。管理対象になる施設は大規模なものから小規模なものまで幅広く、事業用電気工作物の工事で保安監督業務が一任されます。
第一種の資格を取得すれば、大手の電力会社や発電所、変電所などの保安監督者として重要な役割を果たせます。
電気主任技術者試験 (電験)の概要
電気主任技術者試験の受験資格やスケジュール、申し込み方法、試験の内容などについて説明します。
受験資格と日程
電気主任技術者試験では、受験資格はとくに設けられていません。
以下は、令和4年度の試験日程です。
願書申込受付期間:第一種及び第二種、第三種上期試験 令和4年5月16日(月)~6月2日(木)、第三種下期試験:令和4年11月21日(月)~12月8日(木)
【試験日】
- 一次試験:第一種及び第二種、第三種上期試験(令和4年8月21日(日))
- 二次試験:第一種・第二種のみ (令和4年11月13日(日))
申し込み方法と受験手数料
受験の申し込み方法は書面とオンラインの2通りで、オンラインで申し込むほうがお得です。以下は、受験手数料です。
第一種・第二種 書面:12,800円、オンライン:12,400円
第三種 書面:5,200円、オンライン:4,850円
書面の場合、電気技術者試験センターや書店などで受験案内を入手し、必要事項を記入して郵送します。オンラインの場合は、電気技術者試験センターのホームページから申し込みを行います。
電気主任技術者試験の内容
試験の内容は以下のとおりです。
【第一種・第二種電気主任技術者試験】
一次試験と二次試験を実施
一次試験は5つの選択肢から選ぶマークシート方式
二次試験は記述式で、電力・管理、機械・制御の2科目から出題される
【第三種電気主任技術者試験】
一次試験のみ実施される
5つの選択肢から1つを選ぶマークシート方式で、理論、電力、機械、法規の4科目から出題される。
一次試験には科目別合格制度がある
電験の一次試験の合否は科目ごとに決定され、すべての科目で合格できれば、一次試験をクリアできます。1科目でも不合格になれば、一次試験を再受験しなければなりません。ただし、「科目別合格制度」があります。「科目別合格制度」とは、前年度もしくは前々年度に合格した科目の試験が申請することで免除される救済措置のことです。
二次試験には一次試験免除制度がある
二次試験には、科目別合格制度は適用されません。そのかわり、「一次試験免除制度」が適用されます。一次試験免除制度とは、一次試験に合格した人が翌年度に二次試験を受験する際に申請を出すことで、一次試験が免除される仕組みのことです。
そのため、二次試験が不合格でも、翌年度には二次試験だけに集中して勉強できます。
電気主任技術者と実務経験
電気主任技術者の資格取得を目指す上での、実務経験との関連性について解説します。
試験に合格すると実務経験なしで資格を取得できる
電験三種の資格取得の方法の一つは、第三種電気主任技術者試験に合格することです。この場合、実務経験がなくても資格を取得できます。もう一つは、学歴と実務経験の条件をクリアして認定申請を行う方法です。
学歴の条件とは、経済産業省が認定する教育施設を卒業することを指します。卒業後に一定年数の実務経験を積むことで、試験合格と同等の権利が得られます。
認定申請を行う場合、学歴によって必要な実務経験の年数が異なります。大卒なら実務経験は1年、短大や高専の卒業者は2年、高卒なら3年必要です。
第三種電気主任技術者の資格を取得すれば、電気工事を請け負う企業や電力会社での電気関連の仕事、工場、建設会社、ビルメンテナンス会社など、好きな業界で活躍できます。